さて、オーストラリアでは「中東情勢(ホルムズ海峡の危機)によるエネルギーショック」のニュースが毎日のように流れていますので、これから留学を考えている人、現在、オーストラリアに留学中の人への影響がトピックとして SNSなどにも流れています。
現状の中東情勢と留学生・ワーホリの方が準備するべきことは、弊社スタッフの坂本がまとめていますので、以下からご参考を
中東情勢とオーストラリア留学・ワーホリへの影響と対策 Part 1
中東情勢とオーストラリア留学・ワーホリへの影響と対策 Part 2
今回の私のブログでは、現在、オーストラリア政府内で議論されている「最低賃金の引き上げ(5%)」と「学生ビザ保持者の労働時間の制限緩和(2週で48時間 → 60時間)」について解説と「もし実際に施行されたら」という視点でご案内したいと思います。
大前提として議論がされている最中なので、何一つ確実に決まっていません。最終決定は 2026年7月1日という前提でお読みいただけると幸いです。
さて、最低賃金の上昇と労働時間数の増加は、一見すると留学生(特に長期の学生ビザ保持者)にはメリットばかりに見えますが、その裏には「採用のハードルが上がるのでは?」というシビアな現実も隠されています。特に飲食店の経営者にとって、材料費の値上がり、賃金の値上がりはダブルショックです。
「最低時給」があがる?
現在、オーストラリアの公正労働委員会(Fair Work Commission)による「年次賃金審査(Annual Wage Review 2026)」が進行中です。(毎年7月1日からの新賃金を決める重要なプロセスです。何度も言いますが、まだ議論の真っ只中で、決定ではありません!)現時点は以下から↓
Fair Work Ombudsman - Minimum Wages
【1】労働組合(ACTU)の主張:5%アップを要求
オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、最低賃金を5%引き上げるよう求めています。
現在の時給(フルタイム&パートタイム): $24.95
現在の時給(カジュアル):$31.19
要求後の時給(フルタイム&パートタム): $26.19
要求後の時給(カジュアル):$32.44
一次情報は以下から↓
ACTU - Minimum Wage Claim 2026
5%アップを要求する理由
家賃の高騰、光熱費、燃料費の上昇により、低所得層の生活が圧迫されているため。特に「インフレ率(現在約3.7%)を上回る昇給」が必要だと訴え中。
【2】連邦政府の立場
アルバニージー政権は具体的な数字こそ明言していませんが、「実質賃金(物価上昇を考慮した賃金)の維持・上昇」を支持する旨の意見書を提出しています。低所得層が物価高に負けないよう、賃上げが必要だという姿勢です。
一次情報は以下から↓
Annual Wage Review submission supports wage increases for millions of workers
【3】経営者側の懸念
一方で、オーストラリア商工会議所(ACCI)などの経営者団体は、5%もの引き上げは「自滅行為(Self-defeating)」だと猛反発しています。
反発の理由
賃金を上げすぎると、店舗が商品の値上げをせざるを得なくなり、結果としてさらにインフレが悪化するという主張。
参考ソース↓
Employers slam union proposal as 'self-defeating'
現在、上記のような議論がされている最中です。
「働ける時間数」が増えるかも?
現在、学生ビザ保持者に課されている「2週間に48時間まで」という就労制限を、「2週間に60時間まで」に引き上げるという案です。これは「2025年連邦選挙に向けた公約・提案」の流れから浮上したもので、現時点(2026年4月2日)ではまだ「案」の段階です。こちらも何度も言いますが、決定ではありません!
情報ソース↓(PDFファイル)
オーストラリア議会予算局(PBO)の2025年5月付の文書
【1】施行予定日(目標): 2026年7月1日
【2】変更(予定)内容:学生ビザ保持者の労働時間規制が 2週で48時間から 2週で60時間へ
【3】なぜこの案が出ているのか?
人手不足の解消
特にホスピタリティ(飲食店)、介護(Aged Care)などのセクターで深刻な労働力不足が続いており、留学生により長く働いてもらいたいという業界からの強い要望があります。
税収アップ
政府側としても、学生がより多く働くことで所得税収が数億ドル単位で増えるという試算(議会予算局による)が出ています。
【4】学生ビザ審査への影響
より厳格化されることが予想。労働時間数の増加の「前提条件」として、この提案には、年間24万人の新規学生ビザ発行数の「削減」が含まれています 。
「お金が稼げるようになってラッキー!」?それホント? ちょっと待て!
時給も上がって、働ける時間も増えるなんてラッキー!と喜ぶ前に予測されるデメリットを知っておきましょう。
採用競争の激化
労働時間数が増える & 時給が上がることにより、雇用主は「より仕事ができる人」を厳選するようになると予測されています。
特に留学生の9割が従事するであろう飲食店は、昨今のエネルギーショックによる輸送費や材料費の高騰に加え、賃金が上がることはダブルショックです。
ちなみに2026年7月1日から雇い主が支払う年金拠出率も、2026年7月1日から12%(現在は11.5%)に引き上げられます。
これらの要素から、材料費があがり、時給が32ドルを超えてくると、オーナーはこう考えます。
「高い時給を払うなら、教える手間がかかる新人(様々な細かいコストを含め)より、即戦力のベテランを1人長く使いたい。」
特に「個人経営の素敵なお店が多いオーストラリア」ですが、それゆえにコストの上昇には敏感です。
ちょうど 先週末に 現地で飲食店を営むオーナーや店を任されているマネージャーの人とお話する機会がありましたが、やはり「価値を提供できる人材」を求めるようになる(今でも) と現場の方がおっしゃっていました。
ちゃんと「準備」をしておこう!
これからのオーストラリアで留学をお考えの方で、アルバイトをして充実した生活を送るためには、以下の準備が不可欠です。
(1)さらなる高い英語力
時給が上がるということは、それに見合った接客サービスが求められます。オーナーに「この子の英語なら安心して接客を任せられる」と思わせることが、採用への最短距離ですし、英語力はあって当たり前の世界感を持っていきましょう。
(2)「スキルの掛け算」で差別化
単に「働けます」ではなく、プラスアルファの武器を持ちましょう。
例えばカフェ定員を例にしてみると・・・
ベーススキル(職種): [例:カフェ店員]
プラススキルA(技術): [例:ラテアートができる]
プラススキルB(付加価値): [例:インスタ用の写真が上手い]
プラススキルC(信頼): [例:過去1年、無遅刻無欠席]
⇒ 雇用主との面接: 「私はコーヒーを淹れるだけでなく、お店のSNS集客も手伝えます。シフトも安定して入れます!」
上記がもう「今後の最低基準」だと考えて、これからはスキルセットを考えておく時代です。
考え方としては、単なる労働力ではなく「ソリューション(解決策)」を売る視点、店舗に貢献できるスキルを持っておくことです。
(3)コミットメント(責任感)を見せる
もし労働時間が「2週間で60時間」に増えるなら、雇用主は「安定してシフトに入ってくれる人」を好みます。遅刻をしない、急に休まないといった当たり前の信頼を積み重ねること最大の防御です。
最後に・・・
傍目にみて良いルールに変わる(と思われる)時期は、チャンスであると同時にピンチの側面もあります。今までも言われていたことですが、、、
・ひたすら英語力をアップする
・スキルを磨いておく(自分のスキルセットを考えておく)
・コミュニケーション能力をあげておく
・SNSなどの都合のいい煽りや過激な情報を鵜呑みにしない!
など、大事ですが、言い換えれば、それだけ求められる人物像のレベルが上がるわけですが、「準備していた人にとっては多くの場所から求められる」ことになるはずです。
オーストラリアの仕組み上、最低賃金は毎年上がることが通例で、労働者保護の観点から今年も上昇自体は確実視されています。
もちろん中東情勢によっては、エネルギー価格が一段と高騰すれば、控えめな数字(3.5%くらい)」を提示する可能性も高まっていますが、中東情勢という自分たちではコントロールできない大きな波があるからこそ、自分に投資できる部分の準備が、2026年7月以降に命運を分ける結果になりうると思います。
「時給が上がる(かもしれない)からラッキー」で思考停止にならず、この高い時給を背景に海外で稼いで留学生活を充実させるためには、大事な「選ばれる(採用される)側」になるための準備を今から始めましょう!
注意:繰り返しになりますが、最低時給の上昇 & 労働時間制限数の増加も、現時点(2026年4月2日)時点では何も決まっていません。2026年 7月1日の政府の公式発表にて情報をお確かめください。