タクシーの運転手から学ぶ職人魂

オーストラリアで長く生活していると、タクシーの利用頻度もあがります。ただ、メルボルンで「タクシー」について聞くと、大概の人からは「運転が雑」「道を全然わかってない」「車内が香辛料臭い」「お釣りを持っていないから嫌い」など、総括して「良いサービスとは言えない」と返事をもらいます。まあ、概ね自分も同意してしまうわけなんですが。。。。

一番困るのは、道がわかってないドライバー。自分とかは、道を言った段階でドライバがよくわかっていないなと思うと、iPhone上の、Google Mapをみせて、「ここ!ここね!ピン立っているところ」ってグイグイ画面を見せます。遠回りされたらお金多く払うのはこっちですし、ここはビシっと伝えないといけません。

そんな中、訳あって市内中心までタクシーで移動する必要があり、家の近くで流しのタクシーに乗りました。

運転手は白髪交じりの長髪で、サングラスをかけていることもあり年齢不詳な感じ。ラジオから音楽が流れているのですが。ラジオが壊れているのか「ブブブブブブブ」と、常に音が割れています。そういうのも気にしないのか、ちょっとロックな感じのタクシードライバーさんでした。

もちろん、とても混みあう時間なので、ある程度の時間がかかるのは仕方がないと腹をくくっているのですが、このドライバーさんは、自分達が普段使うような裏道&抜け道を使って、目的地に着いたのです。「お、ドライバーさん、わかっているね。」という感じです。この日は「こういう人もいるんだなー」と感心して、タクシーを後にしました。

それから、数日後・・・・。再度タクシーに乗ることがあり、同じく流しのタクシーを捕まえようとすると、どこかでみたサングラス姿。乗り込むと「ブブブブブブブ」とラジオの音が割れています。おお、あのオジサンじゃないですか!

メルボルンしない周辺を走るタクシーなど、まさに星の数ほどあるわけで、同じドライバーに合う確率はびっくりするくらい低いです。

乗り込むと、自分達のことも覚えていたらしく、「Hello again!」と挨拶。この日は、先日よりも更に道が混雑しており、前回の抜け道に行くまでも、混み合って動きません。しかし、ドライバーさん。それがわかると、クルッと周り、脇道に入り込み、あれよあれよと、抜けていくわけです。自分とか絶対使わないような道。スーパーマリオで、初めてドカンワープを見た感じでしょうか。こんなところ抜けられたんだ!というルートです。そして、全然信号に捕まらない。早い早い!ビックリです。

躊躇なく道を選ぶ判断力と、安定したスピードに感心しつつ、運転手さんに「この前も、道をよく知っているから、びっくりしたんだよねー。どれくらいタクシードライバーしているの?」と聞くと、「おう、あててみな!」との返事(いや、英語だからこんな江戸っ子ぽくはないですけど、雰囲気で書いてます)。

「10年?」→「もっと」→「12年?」→「もっと」→「15年?」→「わからないよ」→「27年だよ」と。

27年!!すごいですよね。27年前なんて、自分は日本で暮らしていましたよ。その時から今日まで、ひたすら「タクシーの運転手」という
分野で、最前線で働き続けていたかと思うと、感心を通り越して、感動してしまいました。明らかに道の知識や運転技術を含めて、群を抜いている感じがしたので、名刺は無いのか聞いてみたのですが、「個人じゃないから、無いよ」との返事。残念!

最後には「オレのこと必要だと思ってくれたら、また現れるよ」と、かっこいい言葉を残して去って行きました。

「オレのこと必要だったら、また現れるよ」。このセリフはいつか使いたいのですが、オフィスで働いていると、なかなか使えません。「オレのこと必要だったら、また来てよ」だと、一気にグレードが下がりますし、なにより当たり前の事を言っているだけです。

しかし、何事もその分野を突き詰めると人を感心&感動させられるものだなと、改めて感じる出来事でした。自分も留学生のお手伝いをして、10年ほど経過しますが、27年までの道のりは長いです。ただ、常に自分の仕事内容や生徒さんへのサポート内容を意識することで、27年間かけて身につけるであろう技術を、もっと短い期間で身につけられるのではないかとも思います。

よし、今日も頑張るぞ!

林 真生 / Hayashi Masuyo

オーストラリア、ブリスベン在住。豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 I008)。日本では販売業、IT関連業に携わり、海外といえば旅行でヨーロッパやアメリカを訪れる程度。そんな中、友人のススメもあり、2002年ワーキングホリデーでゴールドコーストへ。右も左もわからない中、留学代理店(現職)のWEBサイト制作をする機会に恵まれ、1年間夢中で専門知識を身につける。その後、勤務先のサポートを得て2006年に永住権を取得。2年後、新オフィス開設に伴いメルボルンに転勤、約7年間をメルボルンで過ごす。しかし、QLD州の暖かさが忘れられず(?)、 2015年7月にQLD州に戻り、現在ブリスベンオフィスの留学カウンセラーとして、全力で留学生のサポートを行っています。このカウンセラーに質問する