
シドニーの中心地タウンホール駅からほど近いショッピングモールQVBは、1898年に当時の英国国王ヴィクトリア女王の即位50年を記念して建てられたことは皆さんご存知かと思います。
建築に約5年の月日を費やされたQVBは、もともとはシティマーケットとして完成し、その後、コンサートホールや市立図書館、市役所など、その当時の人々のニーズに合わせて変貌を遂げ、老朽化のため一時は解体の話も出たそうですが、1984年にショッピングセンターとして現在の形に生まれ変わって以降、シドニーのアイコンの一つとして今も人々に愛されています。
シティの中心部にあるので、シドニー滞在中の方は誰でも一度は行ったことがあるのではないでしょうか。ロマネスク様式のゴージャスな作りは息を呑む美しさですよね。高級なお店が多く立ち並ぶ建物内の雰囲気に圧倒されてしまいがちですが、QVBの隅々にはその歴史を物語る魅力がたくさんあるのです!
まず、南側の正面入口のヴィクトリア女王像。
シドニーシティでの待ち合わせ場所と言えばこの像の前ですよね!渋谷ハチ公前ならぬ、シティのヴィクトリア前で待ち合わせ……何ともオシャレな響きです。
しかし、このヴィクトリア女王像、もともとQVBのために作られたものではないことをご存知ですか?
1908年にこのヴィクトリア女王像は完成し、もともとはアイルランドの議事堂前に設置されていたのですが、アイルランドがイギリスから独立して以降、銅像撤去の声が高まり、1947年に遂にヴィクトリア女王像は撤去され、倉庫の中に保管されることとなり、その役目を一旦終えるのです。
時は流れ、1980年代のQVBの改修工事の際、現在の設置場所であるQVB前の広場にヴィクトリア女王像を新たに設置することが決定し、QVBのプロモーションディレクターNeil Glasserによって、アイルランドに保管されていたヴィクトリア女王像に再びスポットライトが当てられます。
そして40年以上も倉庫の中で眠っていたビクトリア女王像は、船でアイルランドからシドニーに輸送され、約1年の補修作業の末、現在の台座と共に再び人々の前にお披露目されたのです。

そして、ヴィクトリア女王像の愛犬アイラ。

そしてQVBの中にある2つの吊り時計。
北側のGreat Australian Clockは、高さ10m、重さ4t、世界最大級の吊り時計で、アボリジニとヨーロピアンの両サイドから見たオーストラリアの歴史を表現しています。

南側のRoyal Clockは午前9時から午後9時の間、毎時0分丁度に時計の側面にある小窓の中で、イギリスの歴史的シーンを描いた人形劇が5分間ほど流れます。


最後は、QVBの中央ドーム付近に展示されているエリザベス女王の手紙。

その他にも、建物内を彩るステンドグラスやモザイクのタイルなど、QVBの中には歴史を感じさせるものがたくさんあります。各フロアにソファーやベンチが設置されていて、ゆっくりと流れる時間を楽しむことができます。もちろんQVB内にはフリーWi-Fiもあります。



ピアノが弾ける方は、1階にあるグランドピアノで演奏を披露することができます。私が写真を撮るために訪れたこの日も、絶えず素敵なピアノの音色が聞こえていました。

シドニーの中心部にある誰もが知っているQVBですが、その歴史について知る人は多くなく、私自身の中でも街中の一つの景色となってしまっていました。普段よく見ているものでも、改めてよく見てみると、新たな発見があるものですね。シドニーの街中に潜む歴史を楽しんでみてくださいね。