カンタス航空・コロナ禍で面白いマーケティング戦略!

今回の新型コロナウイルスの発生によって最も打撃を受けている業界の1つが、航空業界です。特にオーストラリアでは3月から国境・一部州境を封鎖していることから大きな影響が出ており、タイガー航空の破綻、ヴァージン・オーストラリア航空が任意管理手続きに入ったりと、オーストラリアの航空業界も大変な状況です。

そんな中、最大手であるカンタス航空(カンガルーのマークが目印の航空会社です!)は、なかなか面白い発想のマーケティングを展開してます。

1.国境・州境封鎖してても空の旅へ!〜 Scenic Flight~

オーストラリアではいくつかの州が州境をクローズ・州へ入っても自主隔離が必要だったりと、国内でも気軽に旅行ができない状態が続いています。
そこでカンタスが発案した新しいツアー、その名も"Great Southern Land Scenic Flight"!シドニー空港から出発し、オーストラリアの観光名所を飛行機の中から楽しむ、まさに文字通りの空の旅です!

空から眺める・つまり着地しないので、州境封鎖や自主隔離が関係ないんですね。

フライトレーダーは下記通り。
シドニー空港から出発しコースト沿いを北上、バイロン・ゴールドコースト・サンシャインコーストなど観光地を通過しながらグレートバリアリーフまで行き、その後Uターンをしてウルルへ行き、シドニーへ戻ります。午前11時前に出発し午後7時すぎに戻る、約8時間強のフライト。なお、使用機体はカンタス航空の国際線で使われるDreamliner 787!

このチケットは150名限定販売で、お値段は機体ナンバーに合わせてこんな感じ。
エコノミー:$787
プレミアム:$1787
ビジネス:$3787


ちなみにフライトナンバーまでQF787で揃えられています。遊び心満載w

こちら販売されたのは9月だったのですが、最初ニュースを見た時に「買う人いるのかなぁ・・・」と半信半疑でした。だって、飛行機ってAからBへ移動をする手段じゃないですか。いくら機内から景色が見えるとは言え、出発地と到着地が同じフライトにお金を払う人がそんなにいるのかなぁ、と・・・

そして販売当日に出たニュース。「カンタス史上最速、10分も立たずにScenic Flight完売!!」
すごい!みんなそんなに飛行機に乗りたいのか〜!

実施されたのは10月10日。飛行機の上から果たしてどれだけ景色が見れるのか・・・?と疑問でしたが、かなりしっかり見えている様子。
サンシャインコーストにあるクーラム・ビーチでは、参加者のためにビーチにメッセージを用意していました!"VISIT US FOR REAL"(次は実際に遊びに来てね)"と書かれています。
photo:qantas
機長のインタビューによるとギリギリまで高度を下げ、角度を工夫して、どの席に座っている人でも景色が楽しめるようにしたそう。また、ただ空を飛ぶだけではなく、要所要所で機長やキャビンクルーからのアナウンスによる観光名所の説明も入ってて、良い!
SNSなどにはほぼ載っていないのですが、カンタス航空のウェブサイトからDropboxに保存されている動画・写真を見ることができます!興味のある方は下記からどうぞ。
ニュースレター
動画&写真

このツアーについて調べていると、そもそもの発端が、旅行好きの方や仕事で頻繁に飛行機に乗っていた方・そして飛行機好きの方から、「早く飛行機に乗りたい!!!」と言う声が航空会社側にたくさん届いていたようです。飛行機に乗ること自体を楽しみにしている方達って想像以上にたくさんいて、そこに目をつけたマーケティング戦略だったんですね。

2.機内サービスのギャラリーカート、売ります

飛行機に長時間乗る時の憩いの時間と言えば、機内サービス・ドリンクサービスではないでしょうか?機内サービスが恋しい・でも飛行機に乗れなくて悲しい思いをしている方が自宅でも楽しめるよう、なんと機内サービスに使うカートを販売しちゃうことに!

カートの中にはオーストラリア産のワインなどアルコール類、ティタムなどのお菓子、カンタスブランドのブランケット&パジャマなどが詰め込まれています。あ、カートは偽物じゃなくて、実際に飛行機で使用していた、世界中を旅したものが購入できます。

お値段ですが、送料込で下記のお値段です。安い・・・のかな?もう感覚がわかりません。
・ハーフカート:$974
・フルカート:$1474


このニュース見た時も「面白いけど、実際に家にあったらめっちゃ邪魔・・・誰が買うんだ・・・」と思っていましたが、即完売!だったそうです。

フライトができないのでワインなどの在庫もどんどん無駄になってしまっていたんだと思います。それをただ売るのではなくカートと一緒に売ることで飛行機ファンの心をくすぐった、面白いマーケティングだなぁと思いました。

3.お洋服も作っちゃいました!

着地しないツアー、機内カート販売の次はどんな手法を使ってくるのかな・・・とちょっと楽しみにしていた私ですが、カンタス、ついにファッション業界に乗り出しました。過去にカンタスの制服もデザインしたことがある有名なオーストラリア人デザイナー・Martin Grantさんとコラボして、Athleisure-wear Collection(スポーツウェアと部屋着の中間的な感じでしょうか・・)をローンチしました。昔のカンタスの雰囲気を出すクラシックなデザインになっているようです。

コレクションはこんな感じ。

基本的にはカンタスのFrequent Fryer向け・カンタスポイントで購入できるものですが、現金でも購入できます。パーカーかわいいなぁ、いくらかなぁと好奇心でクリックしてみましたが・・・
$275・・・・うん、これは高いなーーー

ちなみに洋服は、まだ売り切れてなかったですw


カンタス航空は昨年100周年を迎えたオーストラリアを代表する航空会社で、日本でいう老舗企業です。それなのに、コロナ禍で大変な時期にこういう遊び心のあるマーケティング戦略をして、話題性を作ったりカスタマーをひきつけているのは凄いことですよね!

そして、こういうことがすぐに実現できるオーストラリアで観光学を学ぶというのは、やっぱりとても面白いのではないかと思いますよ。

最後に、カンタス航空の機内安全ビデオでお別れです・・・あぁ...これを見たら旅に行きたくなってしまう・・・(涙)
Qantas Safey Video2020

関川 祐利弥 / Yuriya Sekikawa

豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 I094)。ゴールドコースト在住。北海道出身。中高時代、海外の学園ドラマの影響を受け「私もあんな生活がしてみたい!」と16歳でアメリカへ交換留学。ところが現実は理想とは異なり、公共交通機関一切なしのド田舎でのサバイバル生活。1年後、人として、また体型もひと回り成長して帰国。その後、日本の大学を卒業。人材コンサルティング会社勤務を経て、留学業界へ転職。…をしたつもりが、勤務支店が本社に吸収され職を失う。しかしピンチの時には、過去の留学で培ったサバイバル精神が役立つもの。「これは、もう1度海外へ行けということか!」とポジティブ思考で南国オーストラリアへ。現在は、ビーチから徒歩3分のゴールドコーストオフィスで留学カウンセリングと現地サポートを行う。このカウンセラーに質問する