留学エージェントの役割-「可能性」の案内

ちょっと、煽り気味のタイトルになってしまいましたが、本日はオーストラリア留学相談にでてくる「可能性」について。

オーストラリアの留学相談の中には、以下のような質問を頂くことがあります。

1.「無事、大学を卒業できる可能性はどれくらいですか?」

2.「大学を卒業したら永住権をとったり、現地就職できる可能性は?」


可能性。なるほど。確かに可能性を知りたいですよね。上記の1番と2番は少し意味合いが違うのですが、まず1番から。

無事、大学を卒業できる可能性はどれくらいですか?

仮に1番については「ほぼ100%」といって、差し支えないと思います。理由は当社のお客様でも、コーススタート後は、ほぼ100%の方が卒業されているためで、実績をもとにしたパーセントとしお伝えできます。

ここで注意いただきたいのは、きちんと授業を受け、学生としてやるべきことに集中していればと言う話です。

オーストラリアの大学は入試制度がありません。その為、入学希望者の最終学歴の成績をもとに、大学側が合否の判定をしますが、つまり「うちの大学に入学して、きちんと課題をこなせる学力があるか。それだけの実績(成績)を修めてきたのか」という点を判断するわけです。

その上で、希望する大学から入学許可をもらえたのであれば、「無事大学を卒業できる見込みがある」ということですから、やるべきことをきちんとこなせば卒業できます。大丈夫です。

ただ、”あまりやる気はないですけど、現地でアルバイトはするつもりです。それでも”無事、大学を卒業できる可能性はどれくらいですか?となると話は変わってきます。オーストラリアの大学生活は、手を抜いて卒業できるほど甘くはなので、もし学業を一番に考えられないのであれば、留学頂くことはあまりオススメしません。

大学を卒業したら、現地就職できる可能性

続いて2番の「大学を卒業したら、現地就職できる可能性」ですが、オーストラリアでの国内就職は、現状はかなり難しいと考えていただくほうが良いです。

期待を裏切る形で申し訳ありませんが、大学卒業後に卒業生ビザを利用し、1-2年働くのであれば問題ありません。ですが、長期間(3-4年)オーストラリアで働くとなると、可能性で言えば限り無くゼロです。すくなくとも、取りあえず卒業するだけで何とかなると思っている方は、このページを見た記念として、心を改めていただくほうが良いです。

この理由はいくつかありますが、まず1つ目はオーストラリア政府が必要とする職業(職業リスト)が頻繁に変わることや、移民法の改定を含め、ご自身の力だけではどうにもならない要素が多いためです。たまたまうまく行けばいいのですが、たまたまうまく行かないことのほうが多いです。

もう一つは、オーストラリアは新卒のような概念が無く、とにかく即戦力が求められます。企業に属するのであれば直ぐに結果を出せる人材。つまり、大学生活中もインターンシップを含めた実務経験を積み「実績」を持つことが求められるためです。

さらに加えるなら、オーストラリアで働きたいと考えるのは、海外からの留学生として大学に通うかだけではなく、現地で生まれ育った方(永住権や、市民権保持者)たちもです。

オーストラリアの市民権や永住権保持者であれば、就労に関してビザの心配がありませんから、企業はその点を気にする必要がありません。もちろん、現地で生まれ育った方であれば、英語力もネイティブレベルですから、企業側も英語力については心配する必要がありません。

つまり、あなたが、現地企業から採用を勝ち取るためには、その中で頭一つ抜き出て、「ビザの心配が無い、現地在住者よりも、採用する価値がある!」と企業に認めてもらう必要があるわけです。これは、決して簡単なことではありません。

ミスリードしがちな、”可能性”と言う言葉

上記の様に書くと「可能性が低いにせよ、インターンをすれば現地就職できるってことか」と取られてしまうかもしれませんが、淡い期待をもたせるつもりはありません。本当に現地就職は難しいです。乗り越えなければならない壁はいくつもあります。

たとえば、看護師として現地就職を目指したい場合、看護学の学士号を保持(大学を卒業)する必要があります。そうしなければ、オーストラリアが求める「看護師」としての資格が得られないためです。看護専門学校を卒業しても、看護師にはなれません。つまり、看護学の学士号を取得すれば、現地で就職できる”可能性”はあります。

さらに、仮に何らかの理由でビザの心配も必要ない状況(就労可能なビザを保持できた)としましょう。それでも、看護学の学士号をとれば現地就職が約束されるわけでもありません。あなたを必要とする、雇い主(病院等)がいなければ、就職には繋がる”可能性”があります。

はい。可能性です。

ただ、その可能性は一体何%の話をしているのか。よく、お客様から「他のエージェントに聞いたら、このコースなら現地就職できる可能性があると聞いた」という話を伺うのですが、まさに、何%のことを言っているのかという点に尽きると思います。

もちろん、移民法を含め、将来的に現地で就職できる可能性は0%ではありません。ですが、100中、99人が実現できる事と、1人しか実現できない事が、同じ”可能性”という言葉でまとめられることには、違和感を感じます。

イケてない例えですが、車で言えば、フェラーリと自動車免許の関係です。フェラーリ。高いですよね、高級車です。そのフェラーリをを運転するためには自動車免許が必要です。ですが、自動車免許を取得したからと言って、フェラーリが手に入るわけではありません。それは別の話です。あくまで、自動車免許はフェラーリに乗るために必要な「条件」というだけですが、フェラーリを得るためには(購入価格含め)別の条件を満たさなければなりません。

実際「自動車免許をとったら、フェラーリを購入できる可能性はありますよ」と言われたら、きっと「?」って思いますよね。確かに可能性は0%ではありませんが、それとこれとは別の話だとわかると思います。

話が脱線しましたが、これはオーストラリアで現地就職を目指す場合も同じです。学位を得ることと、技術を得ること。そしてビザを取得することは別の話ですから、これからオーストラリア留学を検討されている方は、様々なところで目にする”可能性詐欺”に注意いただきたいです。

それでも正しい情報を知りたい方は、是非ご連絡ください。

ちなみに、オーストラリア留学センターでは、実際に就学されているお客様や、現地の方の実体験をもとに最新の情報をお伝えしています。良いことも悪いことも”事実”としてです。

その為、お客様によっては納得する答えではない場合も多々あります。事実をお伝えしているので仕方ないのですが、できるだけ楽に現地就職をしたいと考えている方や、現地就職にこだわるお客様にとっては、上記のような”厳しい現状”はできるだけ聞きたくない情報だと思います。

その為、当社ではない、優しい言葉(耳あたりの良い言葉と言う意味です)をかけてくれる留学エージェントを希望し、当社以外を利用したいと考える方も少なからずいらっしゃいます。ですが、実際現地に来てからは、嫌でも現実と向き合うことになるという点はご理解ください。

ちなみに、オーストラリア留学を目指す方は「社会で通用する力をつけたい」と考える方が多いため、留学の段階で、就職する場所(国)にこだわる方はあまりいません。留学後は、日本で就職を目指す方もいますし、他国でチャレンジしたいと考える方もいます。その延長で現地就職を視野に入れている方もいますが、なんらかの形で就職先を見つけています。

可能性を求めるなと言う意味ではありません。海外で生活することを含め、挑戦することは大事ですし、やってみて後悔することも無いと思います。

ですが、当社では都合の良い”可能性”だけをお伝えすることは当社では行っていないため、この点はご理解いただければと思います。

その上で、ここまでの内容をみても、やはりオーストラリア留学センターに相談してみたい!という方は、是非ご連絡ください。当社スタッフがお手伝いさせていただきます。

次回は、同じくご質問を頂く「現地オフィス」についてお話したいと思います。

林 真生 / Hayashi Masuyo

オーストラリア、ブリスベン在住。豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 I008)。日本では販売業、IT関連業に携わり、海外といえば旅行でヨーロッパやアメリカを訪れる程度。そんな中、友人のススメもあり、2002年ワーキングホリデーでゴールドコーストへ。右も左もわからない中、留学代理店(現職)のWEBサイト制作をする機会に恵まれ、1年間夢中で専門知識を身につける。その後、勤務先のサポートを得て2006年に永住権を取得。2年後、新オフィス開設に伴いメルボルンに転勤、約7年間をメルボルンで過ごす。しかし、QLD州の暖かさが忘れられず(?)、 2015年7月にQLD州に戻り、現在ブリスベンオフィスの留学カウンセラーとして、全力で留学生のサポートを行っています。このカウンセラーに質問する