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いよいよ、2019年2月から オーストラリアでのナチュラルワイン造りに入っていきます。
オーストラリアはどこに滞在?
2019年 2月から、いよいよオーストラリア、アデレードヒルズの山奥に入っていきますwwGentle Folk(ジェントルフォーク)では、住み込みで収穫から樽詰めまで研修しました。
Gentle Folk(ジェントルフォーク) のワインメーカー、ギャレス氏はナチュラルワイン生産者としてカリスマ的な人気を誇りますが、ワインへの真摯な考え方から日々細々したことまで全てが勉強になった濃密な時間でした。

また、アデレードヒルズの生産地の中でも Gentle Folk(ジェントルフォーク) のある Basket Range(バスケットレンジ) と呼ばれる産地には、ナチュラルワインの生産者がたくさん居を構えていて、オーストラリアのナチュラルワインの聖地と言われています。 世界的に有名なナチュラルワインメーカーが、ここアデレードヒルズから生まれている、と言っても良いくらいなので、それこそ、ナチュラルワイン生産者同士の繋がりも深く、世界中から研修にくるワインメーカーもいて、ネットワークが一気に広がりました。

もちろん、研修中の空いた時間は、自分のワイン造りをします。 自分の初ヴィンテージのブドウは、2019年3月26日に最後の収穫を終えた1トンのソーヴィニオンブランです。今までニュージーランド、ドイツのワイナリーで醸造アシスタントのような仕事はしてましたが、自分の「管理責任」のもと、「決定権」を持って、「醸造、ビン詰め」までやったのは 2019年が初めてになります。

この Gentle Folk で研修中に生産した オレンジワインの Vin d'un jour ソーヴィニオンブラン(2019年)は、先日ビン詰めとラベリングを終えて出荷しました。
シドニーとメルボルンのナチュラルワイン専門店にサンプルとレターを送付したところ、ありがたいことに、全て予約で完売することが出来ました。ワインのブランド名は「Plus Personal Wines 」です。
Plus Personal Wines のワインは下記ワイン専門店でご購入頂けます。
- 「Sydney」
- P&V
- Annandale wine cellar
- Winona wine shop
- 「Melbourne」
- Act of Wine
- Milton Wine shop
- Cult of vines
ぜひ Instagram もチェックしてみてください。
https://www.instagram.com/taka_07120/
ちなみに、ジェントルフォークの研修は無給なので、仕込みが終わってワイナリーであまり仕事がない時期は、生活費を少しでも稼ぐために 「お金をもらえるアルバイトをしないと!」と思い、アデレードのパン工場で働きます。ちなみに求人情報などは見ずに工場を手当たり次第に直接あたって履歴書持って行って、、、、みたいな原始的な探し方です。それでも英語ができればちゃんと見つかりますよww
<仕事探しの一言アドバイス>
アデレードは仕事がないって言われているみたいですが、どうしよう〜って悩むワーホリや学生さんには、あるかどうかわかならい情報が手に入るのを「待つ」よりも「行動」した方が結果が早いよ って言ってあげたいです。
ずっとアデレードヒルズにいたの?
セカンドワーキングホリデーで2年目も自分のワイン造りをしたい! と決めてましたので。来年のブドウを分けてくれるブドウ農家のコネクションを作ることを考えて、Gentle Folk(ジェントルフォーク)の研修中に、約50件ほどのワイナリーにコンタクトをとります。 Gentle Folk での研修と自分のワインの仕込みが一段落したところで、 ビクトリア州のMornington (モーニングトン)のワイナリーから返答があり、ひとまず自分のワイン(醸造中の樽)を Gentle Folk の倉庫に預け、いったんビクトリア州に移動します。
実際にはビクトリア州から南オーストラリア州へ生ブドウを持ってくるのは、フルーツフライの関係で難しいとは思ってましたが、Mornington (モーニングトン)へ移動後、やはり厳しいことが確定します。ただ、ラッキーなことに モーニングトンに移動してから時間差で有名ワイナリーの「Bass Phillip(バスフィリップス)」から働きに来ても良いよ、と言う連絡があり、すぐにGippslandへ移動します。
Bass Phillip(バスフィリップ)と言えば最高峰のピノノワール!
Bass Philip(バスフィリップ)は、知ってる人は多いとは思いますが、オーストラリアでも最高峰のピノノワール(ブドウ品種)の生産者です。フランスのブルゴーニュを意識して、本当に素晴らしいワインを作っています。ワインメーカーは良い意味で偏屈じじいと言っても良いほど、コダワリが強いです。 オーストラリアでは、ナチュラルワインの生産者を目指す自分、バスフィリップの伝統的製法のクラシックワイン、ワインの個性は正反対かもしれないのですが、学べるものがたくさんあるはずと思って、しがみついてました。バスフィリップのピノノワールは、ブルゴーニュのグランクリュクラス並に、衝撃的に美味しいです。クラシックなワインがお好きで、美味しいピノをお求めならオススメです。
結局、バスフィリップでは、12月クリスマス時期にアデレードに戻る前まで、研修を続けることになります。
2020年、再びアデレードヒルズへ

2020年のワイン造りは?
今は、2020年のブドウの収穫は終わりました。今年は、3種類のワインを造っています。そのうちの一つ、リースリングのペットナットは先日、ビン詰めを終えました。 シラーズ(赤)と、カベルネ・セミヨンのロゼは8月上旬にビン詰めを予定しています。
*ペットナットとは?
Pétillant Naturel=ペティアン・ナチュレル(ペティヤン・ナチュール)です。ペティヤン=弱発泡 + ナチュレル=自然のまま、「完全無添加、ブトウのみでスパークリングをつくる」 ことを指してペットナットと略称で呼ばれます
いつまでオーストラリアでワインを造るの?
実は、日本で就職決まりました! 2019年 2月にオーストラリアに来て、今はセカンドワーホリなので、2021年1月ごろまで滞在できるのですが 半年早く 2020年 8月14日に帰国します。長野で新しく設立されるワイナリー(名前はまだ決まってないんです)で醸造責任者の募集があって、内定をもらうことができたんです。 長野ではシャルドネの自社畑混みなので、そのケアもありますし、コロナのこともあり、2021年にオーストラリアでワイン生産ができるか?は 少し微妙ですが、2022年には再度オーストラリアでも自身のワイン造りをしたいので、将来は季節が逆の「日本の長野」と「オーストラリア」でワイン造りに携わる予定です。
ワインの醸造学と英語について
私自身は醸造学などワインについての高等教育を受けたわけではありません。ましてや、ワインとは無縁の家庭でしたから、人一倍に独学での勉強とテイスティングをしなければいけませんでした。
そういった負い目もあったせいか、2017年以降は収穫や醸造がない時期は畑仕事か生産者訪問に全ての時間をあてていました。オーストラリアや ニュージーランドはテイスティングルームが整っていますので誰でもワイナリーに行きやすいのですが、特に欧州圏や日本ではそういった場所は多くなく、ほとんどの場合は電話やメールでアポをとって醸造所やご自宅に伺うことになります。
訪問は朝から夜まで、がんばっても1日4軒ほどしか訪問できませんが、生産者と1対1でじっくりと話し合います。今まで雑誌等でしか見たことのなかった憧れの生産者さんが直々に自分だけのために畑や醸造所をまわりながら数時間という時間を割いて話してくれるわけですから 「外国語がわからない」 「ワインについてよく知らない」ではすまされない状況です。自分のためにもならず、人の好意を無にするので、もしオーストラリアでワイン造りを学びたいと思うなら、少なくても英語は勉強してください。実際に自分も基礎力があったからこそ、言語も知識はこの時にも大きく改善されたような気がします。 ちなみにフランス語は大学在学中とワーホリ中に勉強しました。英語は社会人時代に、ニュージーランドに行く前から毎日コツコツと取り組んでいました。
もちろん、より詳細な情報を得るためには英語ではなく、その国の言葉(フランスならフランス語)で会話をすることで得られる情報量に圧倒的な差が出ました。生産者も母国語から英語に変換しないといけないのは負担ですから、時に言い淀むのは当然でした。
もし経済的に検討でき、本気でワインの生産者として一から取り組みたい人は、醸造学を学んで損はないと思います。オーストラリアだとアデレード大学で醸造学を学んだ、と言うワインメーカーも多く知識やスキルだけでなく、卒業生のコミュニティがあるのは大きなアドバンテージかもしれません。
このように、自分はここ数年はワイン業界という極めて狭い世界での生活をしていますから、海外留学の参考になるかはわかりません。笑。 オーストラリアに1年半もいますが、シドニーでオペラハウスを見たこともなければ、メルボルンのインスタ映えするカフェにも興味がなくて、すみません。 しかし、ワインが好きで、ワインに携わる仕事をしてみたい自分のような人にとってもオーストラリアは本当に楽しい国の一つです。
なぜ?ワインの生産者?

例えば、有名な写真家であれば、1枚の写真で「誰々の写真の作風だ」と作品でわかります。あるワインを飲んで「このワインはタカのワインだよね」って言ってもらえるワインを作りたい と思っています。もちろん、美味しいワインを造って飲んでくれた人が笑顔になることが最高なことは確かです。
ワイン生産者から見てオーストラリアは面白い?
オーストラリアやニュージーランドで生産者を訪問しても、ヨーロッパの生産者と話す内容は全く違います。ワインを好きな人であれば「テロワール」と言う言葉を聞いたことがあると思います。特にフランス・ブルゴーニュなどはテロワールで語られることの一つ、土地(畑)には、厳格に等級が決められており、そこで栽培されたブドウが 収穫〜醸造〜ビン詰めされたワインの将来は、その畑事にほぼ決まっています。
そして、市場ではワイン名やワイナリー名は有名になりますが、そのワイナリーの中のワインメーカー(醸造家)が「誰か?」は話題にはあまりなりません。
欧州のワインメーカーは、ナチュラルワインの生産者であっても、やはり「畑の話が先」になることが多いです。
逆にオーストラリアではテロワールの話よりも、もっと人(ワインメーカー)にフォーカスされている環境にあると思います。自分の研修した Gentle Folk(ジェントルフォーク)でも、市場の認知は、ジェントルフォークの「ギャレス」の造るワインとして人がフォーカスされていますし、特にナチュラルワインの生産者は、よりその人の個性や感性などが上手にワインに自己表現されていると思います。
また、欧州の生産者を廻って話を聞いても、「醸造」などの話にはなりません。 欧州のワイン造りの伝統には、過去のたくさんの偉人たちによる伝統的な手法と知恵があり、それらは科学的に説明できる部分もあり、今年のブドウはこういう出来だから、こういう手法でやればこのくらいのワインができる、という方程式があります。ただし、良い意味でも悪い意味でもマイナーアップデートで止まります。
もちろん、ブドウはテロワールが作るものと言うワインの考えの根幹を 無視はできません。
しかし、その上でワインメーカーの醸造におけるテクニックや考え方の方がオーストラリアでは話題になるのがとても面白いです。
そして、どこから来たかも、本当に経験があるかもわからないアジア人の若造が、ワインを作りたい!と言う情熱だけで、ブドウの仕入れに力を貸してくれたり、施設も自由に貸してくれたり、、、って他国では絶対にあり得ない環境で、本当にありがたいです。オーストラリア最高ですww
最後に将来の展望を教えてください
長野で内定をもらっている新しいワイナリーでは、ナチュラルワインではなく伝統的なクラシックワインを作る予定です。ワイナリーオーナーの期待に答えれるよう、今までたくさんのワイナリーで働かせてもらったり、研修させてもらって得た知識やスキル、人間関係、コミュニケーション、全てを売れる美味しいワインを造るために頑張りたいと思います。ぜひ、日本で発売されたら皆さんに試してもらえたら嬉しいです。
ちなみに、オーストラリアの個人レーベル 「Plus Personal Wines』 ですが、2020年8月にビン詰めするワインのラベリングのために2021年には再渡航する予定(コロナ次第)です。来年以降も、Plus Personal Wines のボトルをナチュラルワインショップで見かけたら、こちらも試してもらえたら嬉しいです。
インタビューを終えて(スタッフより)
タカさんと初めてお会いしたのは、忘れもしない 2019年6月1日。アデレードヒルズの Gentle Folkで研修中の日本人が「自分でワイン造ってる」というワイン好きの人を介しての紹介でした。一緒にワイナリー廻りに付き合ってもらったときのことです。
実際にお会いすると、とても気さくな方で、且つワインがとても好きなんだなというのが第1印象。 話し方も論理的で、とても落ち着いていらっしゃいます。
ただ、何度か時間を共有させていただくと、自身のワイン造りにも、様々な思いを巡らせていることがヒシヒシと伝わり、ただ造るだけじゃなく販売までしたい、など、その落ち着きぶりからは想像できないほど、ワインに関しては冒険的でエネルギッシュ。そんな彼は、オーストラリアのワイン生産者とのネットワークも広く、プロフェッショナルな人はプロフェッショナル同士、業界の人から愛されているんだな、と外から見ててわかります。
そんな彼を事あるごとに、我が家に呼んでは一緒に食事とワインを楽しむ日々だったのですが、8月にご帰国されてしまいます。彼の造るワインも大好きですし、もっといろんな話をしたいなーという自分にとっては非常に残念なこと、この上ないのですが、タカさんの新しい旅立ちを応援して、見送りたいと思っています。(長野には絶対遊びにいく!)
最後に、彼のようにワイン造りをしたい、というワーキングホリデーメーカーも数多くいらっしゃいます。もちろん英語があまり上手でない人も、過去にワイン造りに経験ない人も気軽に挑戦してみたら良いとは思います。ただ、彼のように「より深くワイン造りに携わる」ことが出来るようになるには、しっかりとした語学力と裏付けされた知識とスキルは必要なんだな、と思います。もし、興味のある方は、ご自身に向かって自問自答してみてください。自ずと今すべきことがわかるのではないでしょうか。