リンゴを持って学校へ行くとNG? SA州のフルーツフライ対策

みなさん、こんにちは。アデレードオフィスの齋藤新です。

新学期が始まり、アデレードでの新生活に胸を膨らませている方も多いのではないでしょうか。治安が良く、自然豊かで、人々もフレンドリー、日本人も少なく、物価(家賃)も安いというこの街は、留学先として最高の選択だと思っています。これからオーストラリア留学の検討中の皆さんも、ぜひアデレードも検討してくださいね。

さて、アデレードにいる学生から 「Fruit Fly Quarantine(フルーツフライの検疫)」って何ですか?と質問を頂いたので、「そこに気がつくとは!いい質問!」というわけで解説しましょう。

ちょっと長くなりますが、このブログを読み終える頃には、アデレードのスーパーに並ぶ野菜や果物が今までよりずっと輝いて見え、「このルール、絶対に守らなきゃ!」と思っていただけるはずです。

ハエに規制があるの?

ここ南オーストラリア州(SA州)は、オーストラリア本土で唯一残された「フルーツフライ(ミバエ)に侵食されていない州」です。

アデレードに来て「スーパーのトマトが赤い!」「ブドウが驚くほど甘い!」と感じたことはありませんか?
もしかしたら、それは気のせいでは無いかもしれませんよ。

オーストラリア全土を脅かす「フルーツフライ(ミバエ)」の存在


オーストラリアの農業にとって「フルーツフライ(ミバエ)」の存在はとても厄介だと言われています。
このフルーツフライは 果物や野菜に卵を産み付け、中をウジ虫だらけにしてしまう害虫です。

残念ながら、シドニー(NSW州)、メルボルン(VIC州)、ブリスベン(QLD州)、パース(WA州)、NT準州(ダーウィン)、ACT(キャンベラ)など、他の主要都市がある州では、このミバエが定着(Endemic)してしまっています。

名前の通り、「クイーンズランド・フルーツフライ(Queensland Fruit Fly)」、通称 Q-fly(キュー・フライ)は、もともとクイーンズランド州などの北東部の熱帯雨林に生息していた オーストラリアの「在来種(ネイティブ)」です。

それが他州に来るなんて!なんて迷惑なことをクイーンズランド人が 持ち込んだからだ!・・・

なんて言うのは 冗談で フルーツフライ自体が寒さに耐性をもってしまったためオーストラリアを南下してきたと言うのが科学的な事実のようです。

【注1】メルボルンのビクトリア州は最近まで 頑張って食い止めてたんですが、ついに管理区域(ミバエの量が増えない調整管理)に定められてしまいました。
【注2】パースの西オーストラリア州は、オーストラリア在来種の Q Fly (クイーンズランド フルーツフライ)ではなく、Medfly(チチュウカイミバエ)に浸食されています。

オーストラリアで フルーツフライ に浸食されていない本土は 南オーストラリア州で、あとはタスマニア島の2つだけです。

他州の農家はどうやって果物を出荷しているの


やはり 大量の農薬散布に頼るしかありません。またフルーツフライを確実に殺すため、収穫後に薬品や 特殊なガスで燻蒸(くんじょう)、長期間冷蔵保管したりする「義務」があります。これはコストがかかるだけでなく、鮮度や風味を落とす原因にもなるんですよね。

他州から SA州に野菜や果物は来ないの?


「他州のものも入荷されます(売っています)」!
もし他州から入ってこなければ、アデレードのスーパーには「バナナ(主にQLD州産)」や「マンゴー(NT/QLD州産)」が並ばなくなってしまいますからね。

これら大手スーパーマーケットの業者は 「検疫処理(Sterilisation)」のプロセスをクリアしているからです。
ちなみに、他州の農家さんが行っている検疫プロセスの通りなんですね。

・専用の部屋で、果物を臭化メチルなどのガスでいぶし、卵や幼虫を完全に殺虫する燻蒸(くんじょう)処理
・1℃〜3℃以下の極低温で、2週間以上保管して殺虫する 低温処理(Cold Treatment)
・指定された殺虫剤のプールに果物を漬け込む(Dipping)

業者にはこの設備と技術がありますが、旅行者のカバンの中のリンゴにはそれができない(証明できない)ため、他州からの個人持ち込みは「一発アウト」になるのです。

南オーストラリア州産の野菜と果物


南オーストラリア州は、長年にわたる努力の末、本土で唯一「フルーツフライが定着していない地域(Pest Free Area)」として「国際的」に認められてきました。これが何を意味するか、、、というと、農家は フルーツフライのための余計な農薬を撒く必要がありません。収穫した後、ガス消毒などのストレスをかける必要がありません。必要最低限の人の手の介入だけで済むということになります。

南オーストラリア州で オーガニック栽培が盛んなのも、世界的に有名なワイン用ブドウがクリーンな環境で育つのも、この「フルーツフライ・フリー」のおかげと言ってもいいでしょう。

どうです??

ここSA州で育った果物には、

・ガスを浴びていない。
・無理やり冷蔵処理されていない。
・ギリギリまで太陽を浴びていた。

スーパーやマーケットで「South Australian Grown」のマークを見たら、手にしたくなりますよねww

アデレードのマーケットやスーパーで買うSA産の 果物や野菜は「一番美味しく熟したタイミングで収穫され、そのままの鮮度(最低限の人の手の介入)で食卓に届く」という、実はとても贅沢品なのかもしれません。

ちなみに日本に輸入される「オーストラリア産ネーブルオレンジ」の多くは、実はここSA州(特にリバーランド地方)で、日本は検疫が非常に厳しいため、フルーツフライ(ミバエ)がいる地域からの果物は簡単には輸入しない(SA産はフルーツフライの心配がないから)からだと言われています。

ここで最近の事情


南オーストラリア州は フルーツフライの定着を許さない「完全駆除・ゼロトレランス(一切容認しない)」の方針を取っています。

アデレードの住宅街および近郊、郊外に渡り、州政府によって約3万個以上のトラップが常時仕掛けられています。Biosecurity SA(州政府)の職員が、定期的にこれらのトラップを巡回し、中身を回収して「フルーツフライがトラップに入っていないか」をチェックしています。

トラップにミバエが1匹でも発見されると、その地域をアウトブレイク指定されます。その地域に住む人たちは、フルーツや野菜を地域外に持ち出してはいけません。

最近になってアウトブレイクが発生した地域?


現状(2026年2月)、アデレード市から 郊外の一部(例:Glynde, Campbelltown, Salisburyなど)にてアウトブレイクが発生しており、規制が強化されています。

SA州のウェブサイトから確認できます。
https://fruitfly.sa.gov.au/outbreaks/current-outbreaks

MAP
https://fruitfly.sa.gov.au/outbreaks/outbreak-map

Map上の赤い地域が アウトブレイク地域 です。

参考:地元ニュース
Queensland fruit fly outbreak declared in Adelaide’s north as quarantine kicks in


■規制エリア(Outbreak Area)をまたがない
「赤色のエリア(アウトブレイク地域)」と「黄色のエリア(サスペンション地域)」が設定されています。

例えば・・・
・自宅(赤エリアだった場合)から、学校(赤エリアの外)へ生のリンゴを持っていく → アウトです。「生鮮食品は、買ったエリア(または自宅)で食べきる」。移動させない。

主な禁止・制限対象(Host produce)
果物: リンゴ、バナナ、オレンジ、ベリー類、マンゴー、ブドウなど「ほぼ全て」。
野菜: トマト、ナス、ピーマン(Capsicum)、チリ、アボカドなど「実のなる野菜」。

OKなもの(持ち歩けるもの)
調理されたもの(焼きリンゴ、トマトソース)
加工されたもの(ドライフルーツ、冷凍フルーツ)
缶詰、瓶詰め
根菜類(ジャガイモ、ニンジン)※土を落としたもの
葉物野菜(レタス、キャベツ)

・捨てる時は「火を通すか」か「24時間以上の冷凍」
実は、規制エリア内で果物を捨てるときにもルールがあります。そのまま生ゴミ(Green bin)に入れてはいけません(ハエが繁殖するため)。電子レンジで加熱するか、袋に入れて冷凍庫で凍らせて菌なども死滅させてからゴミ箱へ。

・家の庭などの駆除&消毒に協力が「義務」
Biosecurity SA(州政府)の職員が指定地域を1件1件廻ります。庭に果実のなる木があるか、などのインスペクションがあります。

実は、数年前に我が家も経験がありますが、裏庭に職員を通してあげたあと、駆除用の殺菌スプレーを撒いていかれました。「数日は 庭でワンちゃん遊ばせないでね!」と言い残して、お隣さんに行ってました。ちなみに義務なので断ることはできません。

・暫定的に駆除規制の日程がある
駆除地域の規制には、暫定的に「いつまで」という設定がされています。駆除活動を行い、その後のトラップ検査でも見つからなければ解除となります。

罰金はあるの?


実は、地域をまたいで徒歩、車で移動する分には、よほどのことがない限り止められてカバンや車の中身をチェック!ということはありません。
なので、あまり恐れる必要はないのですが、ぜひこのルールを覚えて、南オーストラリア州の取り組みに協力してほしいと思っています。

なお、他州から SA 州へ お越しになる場合、いかなる交通機関でも果物や野菜の持ち込みは禁止です。これらは罰金対象なので気をつけてください。

最後に・・
アデレードに滞在中の留学生・ワーキングホリデーの方には、ぜひ 南オーストラリア州の美味しくて手頃な価格の SA州産の農作物を守るためにも、フルーツフライ対策の取り組みに協力してもらい!と切に願っております。

齋藤 新 / Arata Saito

オーストラリア、アデレード在住。豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 I009)。経済連を退社しニュージーランドへの留学を決意。留学を終え、今後は ワーキングホリデーでオーストラリアへ。現地の旅行会社勤務などを経て、2002年より現職。クイーンズランド州、ニューサウスウェルズ州、南オーストラリア州の主要都市を移り住み、現在に至る。語学留学、TAFE専門、大学・大学院留学への留学相談、アデレードオフィスの留学カウンセラーとして、全力で留学生の進学相談とサポートを行っています。このカウンセラーに質問する