シドニーフィッシュマーケットの裏話

シドニーのフィッシュマーケット。晴れた日に、外のテラス席で海を眺めながらシーフードを味わうのは、ちょっと贅沢なシドニーらしい時間の過ごし方の一つです。


でも、このフィッシュマーケットにもあまり知られていない長い歴史があります。

実は、フィッシュマーケットが現在の場所に移転してくるずっと前、100年ほど前のこの場所は、煙と騒音に満ちた「工場地帯」。木材工場や造船所が立ち並び、今のオシャレな海沿いのイメージとは正反対の場所だったのです。

フィッシュマーケットは、ブラックワトルベイ(Balckwattle Bay)という湾のそばにあり、これがヒントです。
オーストラリアの国花は「ワトル」という、明るい黄色いかわいいお花です。それなのに、なぜ湾の名前は正反対の「ブラック(黒)」なのでしょうか?

オーストラリアの国花、Wattle(ワトル)

実は、名前の由来は花ではなく、その黒っぽい『樹皮』にありました。昔この辺りでは、動物の皮を丈夫な「レザー」に加工する産業が盛んで、その加工に不可欠だったのが、このブラックワトルの樹皮から取れる「タンニン」という成分。
地名は、かつてこの場所を支えた産業の名残だったのです。


新しいフィッシュマーケットプロジェクト

そして現在の場所のすぐ隣で、新しいフィッシュマーケットが新施設へと生まれ変わるプロジェクトが進んでいます。
その重要なテーマは、サステナビリティ(持続可能性)。

昔、工場が汚水を流した場所で、今度は「雨水を再利用」する。
資源を燃やして煙を出した場所で、「太陽光でクリーンな電力」を生み出す。
市民が入れなかった工業地帯は、誰もが憩える「開かれた公園」へと変わる。

過去とは真逆で、自然の力を賢く借り、環境に優しいマーケットが誕生予定です。


フィッシュマーケットで見れるかも?

興味深い歴史もありつつ、フィッシュマーケットには、訪れるたびに心和む光景があります。

時折どこからともなく現れて、のっそりと歩く大きなペリカンの姿です。
すっかり人慣れしていて、あたりを闊歩しています。このどこかユーモラスな風景も、フィッシュマーケットが長年愛されてきた日常の一コマです。

新しいフィッシュマーケットは、今年2025年の後半から2026年初頭のオープンを目指し、着々と準備が進んでいます。
お天気の良い日に、ぜひフィッシュマーケットを楽しんでみてください。

大越 麻結 / Mayu Okoshi

オーストラリア、シドニー在住。豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 G175)。高校2年の時に、ノースシドニーのカソリック系女子校へ2週間の短期留学。当時、Appleという単語すら聞き取れなかった私を温かく迎えてくれたホストファミリーとの出会いを通じ、またオーストラリアへ来る事を心に決める。その後、アパレル業界勤務、実家家業を経て、2002年ワーキングホリデービザで渡豪。1年の滞在が終わりに近づく頃、何かを得てから帰国したいと考え、専門学校へ進学。Diploma of Public Relationsを修了する。留学業界との出会いはワーホリ時代に遡る。その後、英語学校スタッフとしての勤務、オーストラリア留学センターシドニーオフィスで12年の勤務を経て東京オフィスへ異動。2021年から再びシドニーオフィス勤務。このカウンセラーに質問する