シドニーオリンピックのエコ活動

先日、リオ五輪の閉会式での、次回の東京オリンピックのプレゼンテーションが話題になりましたが、いよいよこれから東京五輪に向けた本格的な取り込みがメディアなどで取り上げられそうですね。学校のクラスメイトにも日本のショーはクールだクレバーだと絶賛でした。

そんな中今回は、2000年にシドニーで夏季大会として開催されたオリンピックについて、エコの観点から少し振り返ってみたいと思います。

大規模な建設や観光客の増加などで、開催地周辺の環境問題はどうしても避けられない問題となってきます。
シドニー五輪は、夏季五輪としては初めて環境保護をメインのテーマとし、環境に優しい「グリーンオリンピック」というスローガンを掲げて誘致活動を行っていました。 


シドニーオリンピックの会場となったホームブッシュベイは、もともと化学薬品メーカーの産業廃棄物の処分地であり、土地には、ダイオキシンなどの有害物質が多く含まれていました。
そこで、委員会は、廃棄物を除去して土壌を浄化処理し、大規模な植林を行い、五輪会場を建設したのです。このことで、オーストラリアの固有の動植物も戻ってきたそうです。
廃棄物処理場をオリンピック開催会場にしたこの土地はグリーンオリンピックの象徴でもありますね。



また、シドニーオリンピック協会は、汚染対策として、遵守すべき100項目以上のルールを定めた環境ガイドラインを公表して、その活動を進めていきました。

【オリンピック・ランドケア】
4万人ものボランティアの手によって、オーストラリア国内に200万本以上を植林したり、水の利用される場所に多くのリサイクルシステムを用いて再利用していたようです。
例えば、トイレや花壇には再処理した下水または雨水を使っていたり、会場には干ばつに強いオーストラリア原産の植物を植え、水やりの回数を減らしたりしていたそうです。


【交通イニシアチブ】
バスや電車などの公共交通機関を観光客に義務付け、その際に無料乗車券が配られていたそうです。
選手村などで使用する乗り物も低公害車が採用され、さらに、開催地の駐車場も使用が制限されていたようです。


【包装と食器の仕様】
ゴミの分別やその後の処理についても徹底的に管理されており、開催地内で使用される食器類、販売されるグッズなども、リサイクル可能な材料や生物分解できるものを使用して、廃棄されるゴミ自体を製造段階からコントロールしていました。例えば…
・スタッフ用の食堂から出たゴミを運営本部内に作ったミミズ農場のミミズが処理していた。
・布製品はできるだけ天然素材を使用していた。
・食器類はすべて陶器製の再利用できるもの、または生ゴミとともに堆肥として利用できる材料で作られていた。
実際に五輪後に出されたゴミの多くは生物分解され、園芸用の堆肥として販売されたそうです。



さらには、開催時にメインスタジアムとして使われていたANZスタジアム(元スタジアム・オーストラリア)でも様々な環境保全に関する取り込みがなされていました。
座席にはプラスチック廃材を混ぜたリサイクル素材を使用し、屋根で受け止めた雨水を再利用できる装置などを設置しています。
そのほかにも、消費電力を抑えるために、太陽光が十分に差し込む構造になっていたり、エアコンの使用を抑えるために風の通りをよくしたりと様々な工夫がなされた設計になっています。

その他にもここでは紹介しきれませんが、たくさんの環境に関する取り組みが行われていました。

これらのシドニーオリンピックの取り込みにより、その後のオリンピックで環境への配慮がさらに重要視されるようになり、開催地として誘致される際の大きな決め手にもなっています。


実際、このグリーンオリンピックも約6万人のボランティアと多くのNPO法人の活動や知恵に支えられて実現したものです。東京オリンピックの際にも、同じようなボランティア活動に参加して、環境に優しいオリンピックを支える一員になりたいと、今回の記事を書いて感じました。

シドニーオリンピックパークは今でも多くのスポーツ競技の会場として使われています。

駅の近くにあった看板です。今でも多くのリサイクルシステムや環境配慮した取り込みが続けられているようです。

隣には大きな公園もあるので、多くの人が訪れています。公園はとても広いですが、自転車のレンタルもあり、様々な地形や動物達を見ることができますよ。ぜひ近くにお越しの際には寄ってみてください。

森安 唯 / yuim

TAFEの環境保護と土地管理コースを専攻中。自身の学校経験や、生活に関する情報をわかりやすくお伝えし、シドニーでの生活をサポートします。

※シドニー支店アシスタントとして2016年3月から12月まで勤務(テキストはその当時の内容となっています)