シドニーハーバー・プロジェクト


先日、シドニーのマリタイムミュージアムに行ってきました。

マリタイムミュージアムと言えば通常、船とか船関連の歴史に関する展示、船に関連する技術科学とかそういうものが多いですが、シドニーのマリタイムミュージアムは無料で見れるところだけでも、海軍系の歴史や潜水艦の中を体験できる模型、海軍の救援ヘリ、移民の歴史やマリンクロノメーターについての展示などもあり、内容は多岐に渡っていました。


その中でもすっかり見入ってしまったのは「シドニーハーバーとシドニーの海」に関する展示。

シドニーでは、1970年代まで産業廃棄物を直接海に投棄されていたこと、大雨が降った後の泥とやごみ、大量の下水が海に流れ込んだことにより、都市部の海の汚染が深刻になり、1980年代から90年代に下水道の整備や廃水処理習慣の改善を行ったそうです。

これらの改善により、かなり海の汚染は解消されましたが、それでもシドニの海岸線やシドニーハーバーでは、様々な環境の変化により海藻は戻ってこず、海洋生物の多様性が失われてしまっているため、シドニーの4大学(シドニー大学、NSW大学、シドニー工科大学、マッコーリー大学)の研究者を含む100名以上が所属するシドニー海洋科学研究所(SIMS)が中心となり、問題を解決するための様々な取り組みをしているそうです。

いくつかのプロジェクトのうち、「住める人工防波堤」と「海藻の復元」プロジェクトがとても気になりました。

NSWでは100以上のビーチがありますが、オイスターや小さな魚が住んでいた岩壁がなくなり、50%は人工の防波堤になってしまっているそうです。そのためシドニーハーバーも魚の種類が減ってしまい、シドニーロックオイスターで有名だった牡蠣も今では以前の10%ほどの収穫になってしまっているそう。

「住める人工防波堤」プロジェクトでは、シドニーハーバー周辺の岩壁に凹凸のある「住める人工防波堤」を取り付ける活動が始まりました。

こちらはモルディブに人工サンゴ礁を作った「リーフデザインラボ」と共同で2019年に取り付け、現在生態圏の変化をチェックをしています。

この人工防波堤は環境に影響がないセラミックやコンクリートなどでできていて、取り付けてすぐに魚が定着をしはじめたそうです。


Living Seawalls: Bringing Sydney's seawalls to life! from SIMS on Vimeo.


「海藻の復元」プロジェクトでは、移植した海藻をサンゴに戻すことにより、かなり多くの繁殖ができ、更に海藻によって様々な生き物も復元してきているようです。


Operation Crayweed from Shannon Ruddock on Vimeo.


新しいテクノロジーとアーティスト、研究者の融合で、シドニーのきれいな海が復活していくのはすごく嬉しいことですよね。しかし、この努力も私たち一人一人が、水を汚さないようにできることをやっていかないと無駄になってしまうので、しっかり意識していこうと改めて思った展示でした。

今度、人工防波堤を見に行ってみようと思います!



National Maritime Museum

鐵見 尚美 / Naomi Tetsumi

オーストラリア、シドニー在住。豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 G176)。20代半ば、ワーキングホリデーでオーストラリアに。アデレード、パース、シドニーなどに滞在しながらラウンドする。しかし、思うほど英語力がつかなかったことから、その後ゴールドコーストで語学学校に通い直し、ようやく英語を話せる楽しさを知る。帰国後、海外で得られる経験をより多くの人に、と留学会社に就職。2007年、当時の勤務先のシドニーオフィス立ち上げのためビジネスビザで渡航し、2010年永住権取得。現在はオーストラリア留学センターのシドニーオフィスの留学カウンセラーとして、カウンセリングや現地サポートを行う。このカウンセラーに質問する