前回、アクティブラーニングについて、都内高校の教員であるHさんのお話から、概要を述べてきた。そして、「日本の教育が変わる」と題して、堅苦しいブログを書いてきた。
『日本の教育が変わる1/3~「考える力」~』
『日本の教育が変わる2/3~アクティブラーニング~』
今回が最終回。自分も頭を使って疲れたので、次回のブログは旅行について~オーストラリアらしい内容に180度変更します(^^♪
日本の教育について最終回、お付き合い下さいm(__)m
by sabamiso
日本出張中、たまたま星稜高等高校、山下智茂野球部名誉監督を取り上げた番組を放映していた。星稜高校は、私の地元石川県の高校でもあり、高校野球にそれほど興味がない私であるが、地元の高校ということもあり、チャンネルはそのままに何気なく見ていた。山下監督が、他の野球部監督を指導しているシーンでこんなやりとりがあった。
山下監督「ボールを投げる時は、どこに向かって投げる?」
若手監督「相手のグローブに向かって投げます」
山下監督「ボールを受け取ったほうは、何て言う?」
若手監督「『ナイスボール』と言います」
山下監督「そうだ、(投げるほうも受けるほうも)それが相手を尊重する、ということだ。そして、野球を教える時も監督は生徒を尊重しなきゃならん」
コミュニケーションはキャッチボール、とよく言われる。キャッチボールをするには、相手の意見を受け止め、そして相手に返す必要がある。
アクティブラーニングは、生徒がお互い意見を言い合う、そして、教員も生徒の中に入り、意見を言い合う。自分の意見を聞いてくれる人がいるから、意見を言いやすくなる。それは、お互いを尊重していないとできないことである。
もちろん、物事はこのように単純にはいかず、相手を攻撃することもあれば、排除しようとすることもある。それは教員がコントロールしていかなければならない点である。
生徒が「自分の意見が役に立つ」と考えることができれば、積極的に発言をするようになる、とHさんは述べる。発言をする、ということは、自分の考えを表明する、ということだ。そのためには、自分で考えなければならない。
小林先生のクラスから、思わぬ副次的な現象も起こっている。
生徒たちが自発的に勉強グループをつくり、グループワークを通じて授業内容の理解をさらに深めているそうだ。アクティブラーニングの結果、生徒のほうから行動を起こすようになったのだ。
Hさんのお話を伺い、「考える力」は行動の起爆剤であると感じた。
考えたことを形にしていくためには、行動しなければならない。ただ、現代の教育制度下では、生徒は教員の言ったことを覚えればよく、自分で考えて行動する必要はない。そして、大学に入り、あるいは社会人になって、急に「自分で考えなさいと」と言われる。
いきなりこのように言われても戸惑うだけだろう。
これは、能力があるないの問題ではなくて、自分で考えることを、それまで抑圧されていたことに問題がある。
「考える力」は留学にも必要である。
オーストラリア留学は、語学留学の場としてももちろん有用であるが、このシリーズの第一回目に書いたように「経験」を期待してくる方も多い。
「経験」を期待する場合、どうやって留学を創っていけばよいのかを考えていかなければならない。それは誰かが正解を教えてくれるわけでもなく、暗記すれば試験にクリアできる、といったものでもない。自動的に英語ができるようになるわけでも、経験が積めるものでもない。
自分で考え、行動し、回りの人たちの助けを借りながら、自分の留学を創り上げていく必要がある。さらに、オーストラリアに来ると、「あなたはどう?」と自分の意見を求められる機会が多くなる。
留学に経験を求める場合、その基礎となるのは、「自分で考える力」である。
「考える力」を発揮して留学ができれば、留学という場で、多くの経験が積めるのではないかと思う。
アクティブラーニングの手法や考え方は、様々なところで応用ができる可能性を持っている。
私自身は、先生でもなく、英語を教えることができるわけでもなく、留学エージェントのスタッフに過ぎない。ただ、留学という場を最大限に活用して頂けるよう、対話を重ね、一人ひとりの留学を創るサポートをしていきたいと考えている。
by Dakiny
Hさんは今、アクティブ・ラーニングを取り入れた、あるプロジェクトを開始しようとしている。その1回目のミーティングが、私がインタビューさせて頂いた数日後にあり、その資料を見せて頂いた。
その表紙には、ウィリアム・フォードの言葉が引用されていた。
「平凡な教師は言って聞かせる。
よい教師は説明する。
優秀な教師はやってみせる。
しかし、最高の教師は子どもの心に火をつける。」
日本の教育現場が、少しずつ変わろうとしている。