こんにちは、ブリスベンオフィスの林です。今年も、Times Higher Education(THE)のWorld University Rankingsが発表されました!
毎年この時期になると、「〇〇大学が順位を上げた」「〇〇大学が順位を下げた」といったニュースが一斉に流れます。これから留学する予定の大学や、それこそ在校生であれば、気になる気持ちはよく分かります。
ただ、このランキングは来年も再来年も発表されるものです。そのたびに一喜一憂するよりも、順位がどう決まっているのかを一度知っておくほうが、ずっと役に立つと思います。
ということで、今年の結果については、ほかでも詳しく紹介されると思いますので、本記事では触れないでおきます。
その代わりに今回は、「そもそもこの順位は、何をどう測った結果なのか」を、THEが公開している評価方法から整理してみたいと思います。
そのうえで、何が測られていて、何が測られていないのか、そしてランキングを見るときに勘違いしやすい点についても、私の考えを正直に書いていきます。
THEランキングの約6割は「研究」の評価
THEの評価は5つの分野でできています。このうち「研究環境」が29%、「研究の質」が30%で、合わせると59%になります。つまり、総合順位の約6割は研究に関する数字で決まっています。これは隠された話ではありません。THE自身が、研究に力を入れている大学(research-intensive universities)を評価するランキングだと説明しています。論文数が一定に満たない大学は、そもそも順位の対象になりません。
ですから、THEの順位は「研究大学としての総合力」を見るものだと考えてください。学部で受ける授業の分かりやすさや、卒業後の就職のしやすさを直接比べたものではありません。
5つの評価分野と配分【THE公式の評価方法】
2027年版の配分は次のとおりです。THEは5つの分野に17の指標を置き、それぞれに重みを付けて合計しています。(出典:World University Rankings 2027: methodology)| 評価分野 | 中身の指標(配分) |
|---|---|
| 教育環境(29.5%) | Teaching:教育面の評判(15%)、教員1人あたりの学生数(4.5%)、学士号に対する博士号の授与比率(2%)、教員数に対する博士号の授与数(5.5%)、教員1人あたりの大学の収入(2.5%) |
| 研究環境(29%) | Research environment:研究面の評判(18%)、教員1人あたりの研究収入(5.5%)、教員1人あたりの論文数(5.5%) |
| 研究の質(30%) | Research quality:被引用インパクト=論文が平均で何回引用されたか(15%)、Research strength(5%)、Research excellence=世界の上位10%に入る論文の数(5%)、Research influence=影響力の大きい論文からの引用(5%) |
| 国際性(7.5%) | International outlook:留学生の比率(2.5%)、外国籍の教員の比率(2.5%)、海外の研究者との共著論文の比率(2.5%) |
| 産業界との連携(4%) | Industry:産業界からの研究収入(2%)、大学の研究を引用した特許の数(2%) |
一方で、留学生の比率は2.5%です。キャンパスに留学生が多いかどうかは、総合順位にはほとんど影響しないということです。
評価に使われるデータはどこから来るのか
データの出どころは、大きく3つあります。1つ目は、THEが毎年行う研究者向けの評判調査(Academic Reputation Survey)です。最新の調査は2025年11月から2026年2月に行われ、前年の調査と合わせて69,000件を超える回答が使われています。
2つ目は、Elsevier社の論文データベース(Scopus)です。2021年から2025年に発表された約1,990万件の論文などと、それらへの約1億8,870万回の引用がもとになっています。
3つ目は、大学自身が提出するデータです。学生数、教員数、収入などは各大学が提出して承認したものです。THEのサイトに表示される学生数などの数字は、原則として2024年度のものです。
なお、学部教育を行っていない大学や、2021〜2025年の論文が合計1,000件(年100件)に届かない大学、論文の80%以上が1つの分野に偏っている大学は、順位の対象から外れることがあります。ランキングに載っていないことが、そのまま「良くない大学」を意味するわけではありません。
THEランキングの良いところ
勘違いしやすい点の話をする前に、良いところも整理しておきます。まず、国によって成績の付け方も入試の仕組みも違う中で、2,000校以上を同じ基準で並べていること自体に意味があります。初めて海外の大学を調べる方にとっては、全体像をつかむ入口になります。
次に、総合順位だけでなく、5つの分野それぞれのスコアが大学ごとに公開されています。研究を続けたい方なら「研究の質」、国際的な環境を重視する方なら「国際性」と、自分に関係する部分を選んで見ることができます。
また、配分もデータの出どころも補正の仕方も、すべて公開されています。この記事が書けるのも、そのおかげです。
さらに2027年版では、301位より下を「301–325位」のような幅(バンド)で表示しています。THEは理由として、この範囲の大学同士の点差は統計的に意味のある差ではないことを挙げています。ここは正直な表示だと思います。
逆に言えば、それより上の順位の数位の差も、大騒ぎするほどのものではないということです。
ランキングで勘違いしやすいポイント
ここからは、あくまで私個人の意見です。THEの方法が間違っているという話ではありません。ただ、留学生がこのランキングを読むときに、ズレが生じやすいのではないかと感じるところがあります。評判の33%は、研究者による投票
評判調査に答えるのは、世界の研究者です。学生の満足度は入っていませんし、学食の味を評価する人もいません。言ってしまえば、総合点の3分の1は研究者による「人気投票」で決まっているわけです。また、評判は「よく知られている大学」ほど票を集めやすい指標です。順位が高いから知られ、知られているから票が集まる、という循環が起きやすいのではないか、と私は感じています。知っておいて損はないと思います。
「Teaching」は授業の質そのものではない
5つの分野の一つに「Teaching」があるので、授業の質も評価されていると思われがちです。しかし中身を見ると、教育面の評判、学生と教員の比率、博士号に関する比率、大学の収入で構成されています。授業の分かりやすさ、学生へのサポート、卒業後の就職状況は、この評価に入っていません。学部留学を考えている方にとって一番気になる部分が、実は測られていないということです。正直に言うと、この中身に「Teaching」という名前を付けるのは、少し言い過ぎではないかと私は思っています。
大学全体の評価で、学部・コースの評価ではない
総合順位は、大学全体をひとまとめにした数字です。しかし、同じ大学でも分野によって強さは大きく違います。医学で有名な大学が、皆さんの学びたい分野でも同じように強いとは限りません。THEは分野別のランキング(Rankings by subject)も別に出しています。志望分野が決まっている方は、こちらを見るほうが判断に近づきます。
データには時差がある
2027年版といっても、論文は2021〜2025年、大学の基本データは原則2024年度のものです。今年の名前が付いていますが、写っているのは数年前の大学の姿だと考えると分かりやすいと思います。評価方法は、ほぼ毎年のように変わる
THEは、国際性の指標に国の人口を考慮する補正を入れています。人口の少ない国のほうが国境を越えた移動がしやすく、有利になりやすいからという説明です。さらに2028年版では、同じ大学内での引用(自己引用)の件数に上限を設け、「被引用インパクト」の比重を下げる予定だと発表しています。理由として、引用を組織的に稼ぐような操作の例があることを挙げています。
方法が変われば、順位も動きます。前年からの数位の上下は、大学そのものの変化とは限りません。だから私は、数位の上下にはあまり意味がないと考えています。
総合順位が高い大学が、皆さんにとって良い大学とは限りません。入学要件、学費、学びたい分野の強さ、卒業後の進路は、順位とは別に確認する必要があります。ここは分けて考えてください。
留学生はランキングをどう使えばよいか
ランキングで大学を選ぶのは、高校で言えば「部活の強さで学校を選ぶ」のに少し似ているかなと思います。野球の強豪校として有名な高校でも、吹奏楽部に入りたい人にとって、見るべきは野球の大会成績ではないですよね。大学も同じです。総合順位が高いからといって、皆さんが学びたい分野が強いとは限りませんし、皆さんに合う大学だとも限りません。
大学のパンフレットや広告に「世界ランキング◯位」と大きく書いてあっても、それは皆さんがその大学で何を学べるのかまでは教えてくれません。
まず、総合順位は候補を広げたり絞ったりする入口として使ってください。次に、大学ごとのページで5つの分野のスコアを見て、自分の目的に関係する部分を確認します。大学院で研究を続けたい方なら、研究の質のスコアは大きな参考になります。
志望分野が決まっている方は、分野別ランキングも合わせて見てください。そのうえで、最後に判断を決めるのは、ランキングに載らない情報です。
なお、毎年6月ごろに発表されるQS World University Rankingsは、別の会社が別の方法で作っているランキングです。THEと順位が違うのは、測っているものと配分が違うからです。
個人的に増やしてほしいなと思う項目
もし私がTHEの”中の人”であれば、次の3つを入れたいと思ってます。学生の満足度(授業・サポート)
THEの評判調査に答えているのは研究者で、実際に授業を受けている学生の声は入っていません。そこで役に立つのが、オーストラリア政府による調査のQILT(Quality Indicators for Learning and Teaching)です。QILTは、最近の在学生や卒業生の回答をもとに、学生生活や卒業後の進路についてのデータをまとめています。比較サイトのComparEDを使えば、大学ごと、分野ごとに比べることもできます。
満足度の調査をどう読めばよいかは、当社の「満足度調査から考えるオーストラリアの大学・大学院の選び方」で詳しく紹介しています。
卒業後の就職状況
THEのランキングには、卒業生がどれだけ就職できたかという数字は入っていません。研究がどれだけ強くても、皆さんが卒業後にどう働けるかは、また別の話です。QILTでは、卒業後の進路についての調査結果も見られます。ただし、調査の対象には現地の学生も含まれるため、日本人の留学生にそのまま当てはまるとは限りません。数字は目安として見てください。
学費と生活費
意外と見落とされがちですが、THEのランキングは学費も生活費も見ていません。学費は大学やコースによって大きく違いますし、生活費も住む都市によって変わります。順位が10位上がっても、家賃は1ドルも下がりません。多くの大学は、公式サイトに留学生向けの学費や生活費の目安を載せています。留学は数年単位のものなので、1年分だけでなく、卒業までの総額で考えてみてください。
このほか、入学要件(成績・英語力・前提科目)や、キャンパスの場所、卒業生ビザの条件なども、ランキングでは分かりません。ここは大学の公式サイトで確認するか、私たちに相談してください。
大学の名前だけで、やりたい仕事を手に入れられる時代は、とうに終わっています。大切なのは、その大学で何を学び切るかです。
ランキングはあくまで目安として上手に使いながら、皆さんがその大学で何を学び切るのか、考えてみてください。