今回おきた大規模な山火事は、特に生態系に与えたダメージが大きく、たくさんの動物が犠牲となりましたが、その中でサンシャインコースト大学の研究チームの活躍により、多くの病気や怪我をしたコアラが見つかっています。
Detection Dogs for Conservation team
サンシャインコースト大学は、「Bachelor of Animal ecology」など、動物の生態学に力を入れている大学として有名ですがlオーストラリア国内で唯一、動物保護のために探知犬の救助、訓練、試験、配備を行っている大学でもあります。その中で「The USC Detection Dogs for Conservation team」は、「探知犬をトレーニングし、自然界の動物を保護する」事を目的としたチーム(非営利団体)で、ロマネ・クリステスク博士と、研究者のセリーヌ・フレレ准教授によって共同設立されました。
探知犬といえば、空港内で見る「麻薬探知犬」をイメージしてしまいますが、さらに目的に特化し「コアラを助けるための探知犬」がいるということです。なんだかスゴイです。
ドッグなのにベアー
そこで、今回活躍したのはベアー(Bear)くんです。Photo: USC
犬なのにベアーくん。この名前をつけた理由を聞きたいです。
このベアーくんは現在5歳。ボーダー・コリーとジャーマン・クーリーをミックスした”オーストラリアン・クーリー”という犬種で、なんとなく、お父さんお母さんの犬種も賢そうです。
2017年に救助犬としてのデビュー。昨年の山火事では2019年11月から救助活動を行い、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の一部でコアラの救出活動を行っています。
発見されたコアラのほとんどは、ニューサウスウェールズ州の高山地域にあるツーサムズ・ワイルドライフ・サンクチュアリ(Two Thumbs Wildlife Sanctuary)、南部のテーブルランズにあるネリガ(Nerriga)、クイーンズランド州のギンピー(Gympie)地域にあるカンダンガ(Kandanga)の近くに生息していたそうですが、その数なんと100頭以上。
この救助活動は現在進行系の話で、今もベアーくんはコアラを日々救出しています。というのも、山火事のシーズンは3月で終了したものの、餌であるユーカリが見つからず、餓死寸前のコアラもたくさんいるとのことで、今もベアーくんやチームは、病気や怪我をしたコアラの救助活動のため日々山々を捜索しているそうです。
Photo: USC
ちなみに、どうやって瀕死のコアラを発見しているかというと、人間が赤外線カメラを搭載したドローンを使い、森の中のコアラのおおよその位置を特定します。
そこに、ベアー君を送り込むのですが、探知犬ならではの抜群の嗅覚を発揮し、広い森の中でコアラを探し出してしまうそうです。もちろん地面はまだ熱を帯びていますので、専用のドッグジューズは欠かせません。
ベアーくんが見つけると、専門家チームが査定し、必要に応じて保護するようですが、あの、強烈なススの匂いしかしない山火事の跡地でもトレーニングされた犬は、コアラの臭いがわかること、そしてこの方法を思いついたサンシャインコースト大学のロマネ・クリステスク博士にも驚きです。
確かに、コアラにとっては、山が燃えてしまい餌がない状況です。当分通常の生活には戻れないのでしょう。新型コロナウイルスではありませんが、コラにとっての生活が元に戻るのはもちろん、あの焼け野原になった土地が回復するのは、相当な時間がかかります。
そんな中、明確な目標を持って動き、しっかりと社会に貢献しているThe USC Detection Dogs for Conservation teamは素晴らしいなと思いました。これからもベアーくんの活躍とともに、一頭でも多くのコアラが助かってくれることを祈りたいです。
また、サンシャインコースト大学に限らず、オーストラリアの大学には様々な研究室があります。
海外の大学であっても、様々な条件をクリアした方でなければ、研究室に所属することはできませんが、「自分の大学の研究室ではどのようなことが行われているかな?」と興味を持つ方もいると思います。
多くの研究室(研究内容)は、各大学のWEBサイトにも掲載されているので、興味のある方は、是非目を通してみてください。予想もしなかった、自分のやりたいことが見つかるかもしれません!