オーストラリアにはイングリッシュ・オンリー・ポリシー(EOP:English Only Policy)を掲げている語学学校が多くあります。学校内の指定されたエリア以外では「英語以外で話してはいけない(母国語禁止)」というルールです。学校によって厳しさのレベルは様々ですが、このルール破ると1日退学という厳しいペナルティが課される学校もあります。
このルールの大きな目的は、やはり「学生の英語力向上のため」なのですが、ワーキングホリデーをしていた時、このルールはオーストラリアで働く上でもとても大切なことだと教えられました。
とある田舎の観光客向けのカフェで働いていた時の話です。当時、そのポジションで働いていたのは日本人だけでしたが、マネージャー(韓国人)やヘッドシェフ(ドイツ人)から仕事中は必ず英語で話すよう口酸っぱく言われました。最初の1ヶ月で一番よく注意されたことは、仕事云々よりこのことだった気がします。
なぜなら…
お客様や同僚に不快な思いをさせないため
そのカフェには、世界中から観光客がやってきます。また、その施設ではオーストラリア人の他、韓国、ドイツ、イタリア、イギリスなどから来たワーホリメーカーも働いていました。もし、私達が、彼らの理解できない日本語で会話し笑っていたとします。もしかしたら「自分のことを笑っているのではないか」「悪口を言われているのではないか」と不快な気持ちになるお客様や同僚がいるかもしれません。また、その相手が同僚であった場合、会話に入れないことで疎外感を感じるかもしれません。そういえば、私が通っていた語学学校にもEOPがあったのですが、ある金曜日、全校生徒が集まる場で同じような話がありました。「学校でたったひとりのポーランド人。彼女をひとりぼっちにしないためにもEOPは守って欲しい」と。全員がそう感じるわけではないと思いますが、誰かに不快な思いをさせるような行動はできるだけ避けたいですよね。
従業員全員の意思疎通のため
多様な言語を母国語とする人たちが働いている職場で何かトラブルがあった場合、それぞれが母国語を話していたら、全員が何が起きているのか把握するのに時間がかかります。一方、全員が英語を話していれば、ひとりが一度説明するだけで全員が理解できるし、対応のための役割分担もスムーズです。
多様な言語を母国語とする人が働いているオーストラリアのような職場環境で、「全員が同じ言語でコニュニケーションを取ることがいかに大切か」ということはオーストラリアの専門学校のビジネスやリーダーシップの授業でも学びます。イングリッシュ・オンリー・ポリシーと言われても、自分の思ったことが思うように伝えられないとついつい日本語を話したくなってしまいます。でも、ワーキングホリデーや学生ビザの留学生のほとんどが、オーストラリアの様々な職場でアルバイトを経験すると思います。もちろん、日本人だけが働いている日本食レストランなどでは日本語の方がスムーズな場合もあるし、日本語での接客が求められることもあるので、どんな場所で働くかにもよると思いますが、オーストラリアで働く準備だと思って、語学学校のルールの厳しさにかかわらずイングリッシュ・オンリー・ポリシーに取り組んでみてはどうでしょうか。きっと、役に立つと思います。