私たちは、好むと好まざるにかかわらず、意識しているのかしていないかも分からないまま、ある世界観の中で考え、行動し、喜び、悩んでいるのだと思います。その世界観と言うのは、時代によって社会から要請されているものを、人ぞれぞれが敏感に感じながら、自分の中で作っていくものです。例えば戦前はお国のために生きるという社会の要請があり、高度成長期にはあきらめずに頑張れと言う要請があり、きっと今は自分らしく生きろと要請があるのだと思います。
社会から要請されている通りに生きていくのは、多くの人にとってストレスを溜めない一番いい方法で、真面目な人ほど社会の要請に疑問を持ち、悩んでしまうのは、たぶんどの時代でも同じなのだと思います。しかし、そのような疑問を持つ人が芸術などの分野でエネルギーを発散させ、活躍できたのだと思います。
今の時代のほうが、逆に自分らしく生きろと、目標が個人に押しつけられてしまって、一見何でもありで自由のように見えて、どうしたらいいかみんな立ちすくんでしまっているような印象があります。そう言われたって、この不景気ではやってみたいことを探すのも難しいし、そもそも自分らしさなんてよく分からないから、好きなものを買って家に飾って、素敵な自分の空間を作ることが自分らしさということで、うちにこもる人が多くなったのかもしれません。
世界を旅してみると、その社会の要請や、その国の人々の世界観は日本人のそれとは大きく違っています。別に真似をする必要もないし、自分の世界観を壊す必要もありません。ただ、違う人がいるということを意識できればいいのだと思います。自分の世界観ってこうだよなとちょっと第3者的に自分を見つめ直してもらえばいいのだと思います。そんな時間は若いときにしか作ることができないし、若いときにそんな時間を経験することで、素敵な大人になっていくのだと思います。